2017年10月24日

平和のために For the Peace

Work in Progress
先日、ノーベル賞や、選挙の話をした時、
娘に、ジャーナリストや、研究者、政治家という仕事を紹介した。
すると、
「ナノカは、絵で、人の心を変えたい(戦争を終わらせたい)」
と、答えた。

絵を生業とするものとして、 考えさせられた。

ナノカは、「戦争で苦しむ人たち」
たとえば、「連れ去られる子供」などを
描くことによって、戦争が終わると思う、と言っていた。
ゲルニカ、のようなものを、考えているのではないかと思う。

わたしは、平和を描くとき、平和な時間にしか、
存在しないものを、表現してきた。
たとえば、「花を育てる」ということ。

園芸研究家の柳宗民さんのエピソード。
戦時中、食べられない、銃後の助けにもならない
「花を育てる」ということは、禁じられていたそうだ。
でも、植物を愛する、柳宗民のお母様は、こっそり、内庭で育てていた。
それを兵隊さんに見つかり、てっきり、罰せられると思ったら、
「あ、花だ。花だよ!」「本当だ!」
と集まって、嬉しそうに、眺めたのだという。
灰色だった、人の心に、花の色が、輝いて見えたのだろう。

人が、殺され、傷つく姿は、もちろん、戦争の最も恐ろしい側面だ。
でも、たとえ、爆弾が頭の上に落ちなくても、
花を愛でる自由が、奪われてしまった、日常というのは、
やはり、とても、不幸な状態だろう。

わたしは、9.11をニューヨークで経験している。
その後、イラク戦争へとアメリカが突き進んでいき、
隣人たちは、対立し、街が、不穏な空気に包まれていった。
友人同士でも、それぞれ、複雑だったと思う。
重苦しい雰囲気の中、なにか、できないかと、
「平和をテーマに、それぞれ、絵を描いてみない?」
と、平和の展示を企画したのだった。

テキサス出身のトレイの描いた、マンガタッチの子供の笑顔、
プエルトリコ出身のシルビアの描いた、バラバラの体(sexのエクスタシーを表現した)
そして、私は、平和を花で表し、
動物たちを、平和を育てようとする、人間に変わって、登場させた。

バラバラの絵が並ぶ、平和ポスター展だったが、すこぶるいい反応を得られた。
「それぞれ、違うけど、みんな、平和を望んでることが、伝わった。」
「なんか、希望が湧いた」と。

わたしは、「人間なんて、戦いをせずには、いられない愚かな生き物で、
平和なんて、ムリなんだ」と、絶望してた所があったので、
この反応に、感動した。

それぞれが思う「平和」の形は違うかもしれない。
でも、だれも、戦争なんて、望んでない。
その事実に立ち返れば、平和は可能な気がした。

人は、不安から、必要以上に、自分を守ろうとしてしまう。
すると、必要もないのに、攻撃的になってしまう。
それが、戦争の素でもある。

この「平和は、可能な気がする」という希望の気持ちを広げたい。
そんな絵本はできないだろうか。
そうして生まれたのが、「はるに うまれる こども」だ。

ちょうど、長崎の日本福音ルーテル教会で行われる
「絵描きたちの、平和のメッセージ 原画展」に参加することが、
決まっていた。
これが、やはり、わたしの描く、平和だろう。

わたしは、「はるに うまれる こども」に
新たに、1ページずつ、加えていくことにした。 

長崎の平和な時間。
眼鏡橋を舞台に、あそぶ、兄妹を描く。
「にいさんと あそんだ ふるいはし」

展示は、11月14日〜19日
かこさとしさんや、原ゆたかさんなど、豪華!絵本作家大先生たちの原画の展示が主ですが、長崎在住作家として、彩りを添えさせていただきます。

18日(土) 15:30〜16:00に、
「はるにうまれるこども」が生まれたエピソードと、
朗読をさせて、いただくことにも、なりました。

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