約9年前、湿気が立ち込める、梅雨のムンムンしたこの季節に、
ナノカは生まれた。
その時、助産師さんの一人がナノカの手を見て、
「あら、きれいな長い指。楽器をやらせるといいよ。三味線とか。」
と言った。
三味線。生まれたての赤ちゃんに、勧めるものだろうか。
しかし、ナノカが物心ついて、最初にやりたがった楽器は、ヴァイオリンだった。
2歳児にヴァイオリンなんて、どうしたものか。高そうだし。
そう思い、ピアノを勧めると、
「まず、ピアノ習って、次にヴァイオリンする」
と、引き下がった。
4歳から習ったピアノだが、思うように動かない指に苛立ったのか、
引っ越しと同時に、7歳の時に一度、やめてしまった。
半年ほどの期間をあけて、再び、弾き始めはしたが、
音楽そのものは好きだけど、ピアノを極めたいとの気持ちはなさそうだ。
今、楽しく弾けている様子を見ると、音楽との距離感を、無理やり縮めるのも
また、違うのかなと感じた。
続ける中でしか、喜びは生まれないのだし、楽器は、空気のよ
うにいられるぐらいが、その子にとっての正しい距離なのかもしれない。
そんな中、ジュニアオーケストラに入れる年齢になり、
ヴァイオリンをしたいと、また言い出す。
この人が言うたびに、なんとか叶えてやりたいと奔走してしまうが、
今までの経緯から考えると、気ままに、気軽に発言してるようにも思える。
どうすべきか、、、
そんな中、コロナ。
ジュニアオーケストラの募集は中止となった。
まあ、あれもこれもして、佐世保に週に何度も通うのもキツイだろうし、
これでよかったのかも。
そんな時、ふと東彼杵町のスポーツサークルの中に、なぜか三味線があるのを見つける。
三味線、、、よみがえる助産師さんの言葉。
ナノカに「ヴァイオリンじゃなくて、三味線ってどう思う?」
と聞くと、どういうの?と聞くので、
Youtubeで、志村けんの三味線演奏を見せた。
「すごい!やりたい!」
これもまた、気ままな感じがするが、なにせ、格安、家近、楽器貸出。
行ってみることにしてみた。
そうして、ナノカは、中高年100%の三味線サークルの新たなメンバーになった。
小学生のナノカにとって、三味線の大変さは、長いこと、重いこと、だ。
端っこまで手は届かないし、すぐに、重さでヘトヘトになる。
私は、黒子のように後ろにひっついて、3分おきに、支えに入る状態。
でも、横で聞いていて、「これは、おもしろい楽器だな」と思った。
メロディラインと、拍の両方を、演奏しながら、さらに歌を歌うのだ。
独特のリズム。
指が動かなくて、イライラするという事はなさそう。
これって、楽器の性質の違いなんだろうか。
さまざまな、日本の文化と並走してきた楽器。
長唄、日舞、お囃子、 落語、
渋い君には、向いているかもしれない。
9歳を目前に、新しい楽器を始めたナノカ。
10歳の誕生日には、三味線を手に入れたいと言い出した。
さてはて、1年、がんばれるかな?
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