2018年11月10日

かんころ切りの季節 Trip to Goto

畑の横に、大型の干しだなを設置
足を悪くしたから、海岸で夫婦で工夫して、低い棚を設置
美しい棚には、美しいカンコロ
手入れの行き届いた、美しい道具
カンコロ作りにチャレンジする3年生
 小値賀に1泊、上五島に1泊の取材旅行。

1日目は、小値賀担い手公社の茹で干し芋協会の総会に出席した。
(なんて、ディープな体験!)

小値賀は初上陸。
自転車で島内を回れるほどの、なだらかな島。
「おぢかは、宝島ぞ」
と勇さんが言ってたことを、思い出す。

豊かな土地で、メロンやトマト、落花生、和牛の高級特産品もあり、
入江も多く、漁業に支えられてきた、島。
同じ五島列島でも、空気から、違う。

五島では、カンコロ切りがシーズンを迎えていて、
干されているのを、あちこちで見かけた。
小値賀は、毎年、干しだなを、作っては壊す、方式。
道端に突然、棚が出現したり、田んぼの上に棚を作ったり、と
おおらかな雰囲気だった。

2日目は、上五島に移動して、魚目小学校に授業をしに行った。
元気いっぱいの、目のキラキラした3年生、20人。
かんころがどうして、減ってるか、考えてもらうと、
さまざまな意見が飛び交い、活気あふれた討論が生まれた。

3日目は、会議。
そして、今にも、消えようとしている、天日干しのカンコロの現状を
つきつけられた。

ここ10年で、10分の1に減った、カンコロ。
さらに、今の担い手が、70代が主であることを考えると、
ほぼ、消えて行く運命を、止められるように思えない。

美しい段々畑も、干し棚も、干された美しい黄金色のカンコロも、
もしかしたら、あと数年しか、見られない風景なのかもしれない。

室内機械干し、芋の輸入など、行政側は、特産品「かんころ餅」を
安定供給することに、舵取りを始めたようだ。
致し方ないことなのかもしれないが、味が変化していくことは、
否めないだろう。切り捨てられていく部分の価値は、計り知れない。

残念ながら、そうした、大きな効率化の波は、
美しい原風景を消滅させるのを、促進してしまう。
島内の、ほぼ無農薬で、形がいびつな芋は、取れ高も少なく、
機械化された商品作りには、対応できない。
手間のかかるカンコロ切りだけではなく、畑さえもおびやかす流れなのだ。

こうやって、昭和、平成、と人は、
手間がかかるけど、その一手間が、味や、安全や、安心を支えていたよね、
というものを、どんどん、切り捨ててきた。
平成も終わり、時代が変わろうというタイミングで、
なんとか生き延びていたものが、失われていくのを見るのは、辛い。

私は、伝え手、という仕事なので、
取材し、記録し、記事や物語にし、伝えていくしかない。
切なさを感じながらも、まだ、生き残っている風景や
そこに生きる人たちの、本音や、きれいごとだけじゃない生活を
受け止めていきたいな、と思う。

「あれ、おいしいよね」
の後ろ側に、これだけのストーリーがあり、
社会問題があり、そして、
「いつの間にか、消えてたね」
に繋がっていること。

もう1年、記事を書くチャンスをもらったので、
掘り下げていけたらな、と思う。

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