いつもは、3時間以上かかるフェリーに、あえて、乗るのだが、
とにかく、時間いっぱい、島の人に会いたい、と
高速船に乗った。
行きは、それほどでもなかったけど、
帰りは、港を出た途端、体が浮き上がるほどの揺れに、襲われる。
気持ち悪くなったら、1時間40分、逃げ場がない。
横になって、目をつぶって、体を固くして、
ただただ、耐え続けた。
佐世保港に着いた時は、脂汗びっしょりだったが、
大荷物を抱えたまま、保育園に走って行く。
2日ぶりのナノカが、ピョーンと、飛びついてきた。
尾上さんの畑で、びっくりしたのは、フカフカの土。
そこから、大きな、汚れひとつないサツマイモが、
わんさか、出てくる。
「子どもはね、愛情たっぷりに、育ててあげないとね。
また、その子が、大きくなって、子どもに、愛情を注げなくて、かわいそう。」
急斜面の小さな小さな畑に、ありったけの手間と工夫を加えた土。
畑の土を見れば、子どもへの愛情を惜しみなく与えたことが、容易に想像できた。
畑には、集落の下の湾へ、よせる波の音だけが聞こえる。
上を見上げると、多石山という山がそびていている。
「ほら、ススキが見えるでしょ。秋らしくて、いい風景でしょ。
この間、姪っ子たちが来て、
そしたら、穂の所を集めて、敷き詰めて、
「おふとんだから、おばちゃん、寝て!」 て言うのよ。
子どもの感性って、ステキよね。
あれが、枯れたら、畑に混ぜ込むの。何にでも、いいわけじゃないのよ。
スイカに入れると、とっても、おいしくなったわ」
集落は、港からも車で40−50分ほど離れている。
子どもも数えるほどで、当然、塾もなければ、 早期教育とは、無縁だ。
でも、集落の子供達は、優秀で、感性が豊かな子が多いと、聞いた。
わかる気がした。
風を感じ、自然の中で、
愛情と信頼を与えられ、育っていく。
教会に響く、美しい、祈りの言葉。
勤勉で、誠実な、大人たち。
子どもを育てるって、
まず、その子が、自分で、育っていくのだと信じること、
きもちのよい場所を、整えてあげること、
そして、前に立って歩く人間として、
自分の行いを、まずは、正すこと。
そう、教わった気がした。
ピョーンと飛び出てきた娘を、しっかり抱きしめて、
そして、彼女を信じるなら、言うべきではない小言を飲み込み、
じっと眺めていた。
「ママ、なんで、ニコニコしてると?」
と聞かれた。
「ナノカが、かわいいから」
「ママも、かわいいよ」
島の人がやさしいのは、やさしさに囲まれて、育つから。
相手を、信じているから。
自分も、信じられる人になりたいと、思う。
0 件のコメント:
コメントを投稿