2019年6月19日

オタマじっけん Tadpole Experiment

6月頭、田に水が入り、にわかに生き物にあふれる
オタマジャクシをカエルになる所を観察しようと、捕まえに行くと、化学肥料で半日で全滅していた。
化学肥料と生物の共存量を探るため、実験することを考えるナノカ。「でも、オタマジャクシ、実験中に、いっぱい死んじゃうね」
先日の、「半日で、オタマジャクシ(とタニシ)全滅」は、強烈な体験だった。

ただ「化学肥料って怖い!反対!すべて、オーガニックにすべき!」
と言うのは、簡単だけど、多くの兼業農家がひしめく日本で、
それは、今すぐには、実現不可能だろう、とも思う。

私が、直感として疑ったのは、「過剰に撒いているのではないか」ということだ。
また、水棲生物が一気になだれ込んだ時に、一気に撒くことで、全滅に至ってるのでは、とも思った。

その話を、車中で相方に、グダグダ話していたら、
聞いてないと思ってたのに、家に帰ってから、
「やっぱり、過剰っぽいね」と資料を見せてきた。

だいたいの化学肥料は、酸性によりがちな日本の地質を
アルカリ性にするために撒くのだが、水棲生物は、水に浸かっているため、
突然の酸性→アルカリ性の変化に、短時間で耐えられなくなる。
化学肥料の毒性というより、そこなのかな、と思った。
人間で想像してみると、突然、空気が吸えないものになったり、
身体中の水分が抜けたり、のような変化 なのかな、と思う。

「水棲生物が生き延びられて、収量も変わらない、
ギリギリのラインがあるんじゃないか」
というのが、私の考える、現実的な共存だ。
「時期をずらす。あるいは、2、3回に撒くのを分ける」
なども、負担が少なく、できそうな気がする仮説だ。

「春に牛糞を田に入れる」「レンゲを植える」「野焼きをする」などが
併用できたら、さらに、化学肥料の量は減らせるとか、
手間とお金で可能なラインが、それぞれにあるだろう。
でも、もう少し、きめ細かいガイドラインの指導があれば、
生態系を守る事にも、つながるはず。
わが家の日曜討論は、グダグダ続いた。

こうした大人のやり取りを、聞いていたようで、
ナノカが、「化学肥料について、調べてみたい」と言いだした。
自分も学校で、田んぼをやっているので、興味が出たようだ。
「どのぐらいの量までの化学肥料なら、オタマジャクシが生き延びられるか、
実験していったら、いいと思う。」と言った後で、
「でも、実験中に、いっぱい、オタマジャクシが死んじゃうね」と付け加えた。

農協は、農薬や種、苗などを売って、儲けを出す。
だから、その指導は、農薬+化学肥料を、多く売ることが前提となる。
農産物の集約、出荷も引き受けるが、生産するのは農家なので、
基本「お金」で動いている組織だ。
最近では、農産物よりも、保険や金融に必死になってる農協も多い。

という話は、離島で聞いた。
離島は、外へ農産物を出荷しても、輸送コストがかかるため、
もともと、外向け生産物を作ることが、ほとんどなかった。
ゆえに、農業は、自家用の野菜が中心なので、規格がなく(出荷するには規格がある)
わざわざ農薬・化学肥料にお金を支払う人もなく、無農薬に近い野菜が基本だ。
島の農協職員も、そうした個人のサポートをしてきた。
今は、指導ではお金にならないから、農協本部から、保険の勧誘ばかり
させられている、という裏話も、耳にした。
これを、国や農業のいく末として、本当に正しいのか、
考える人は、農政の中央にいないのだろうか?

ナノカと、帰り道に、畦道を歩いて、オタマジャクシのいる田んぼを探した。
この間、最後にオタマジャクシを取った田んぼにも、肥料が撒かれて、
死滅していた。どこも、タニシの死骸が大量にふちに重なっていて、
静かな、静かな、田んぼばかりだった。

私自身は、これをなんらかの形で、人に伝えるぐらいしか、できない。
でも、ナノカが、何かを実感し、自分なりの考えを述べてる様子を見ると、
子ども達は、これから、最前線に行き、仕事をしていくのだな、と思い直した。

多くの小さなハートに、
今起きている、さまざまな矛盾や、問題を、感じて欲しい。
そして、大人は、それを「しかたないんだよ」と潰すのではなく、
「残念だよね。どうしたらいいかな?」と、
考えたり、試したりすることを、応援する。

その子たちは、いずれ、研究者、発明家、ジャーナリスト、官僚、政治家、
先生、農家、商売人、IT社長、ユーチューバー、医師、会社員、になっていく。
どの職業の、どんな立場になるか、ばかりに親は必死になりがちだが、
大切なのは、ハートに刻んだ、原風景や、熱い思いの方じゃないだろうか。
そうであって欲しい。

死滅してしまった田んぼから、3匹だけ、救うことができたオタマジャクシ。
日に日に大きくなる。
これが、カエルになった時、きっと、なにかを感じるだろう。
なにも、強要する必要はない。
君は、きっと、世界を変える人になる。

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