2018年5月29日

絵本作家が行くかんころの島紀行8 Article Goto island 8

Mainichi Times May 28th issue.

Arifuku Cathedral and Satsuki's farm and huge onions
世界遺産登録勧告が出た後、「おめでとう!」と様々な人に言われました。
県外から見ると、長崎県全体が、待ち望んでたように見えるのでしょうか。

この記事を書くのには、いつも以上に、苦労しました。
いろいろな人の顔や、気持ちが浮かびました。
上五島の文化を守りたい気持ちは、みな、一緒。
だからこそ、複雑でもある。

教会は、信徒さんの持ち物です。
彼らの先祖が、年収の何倍ものお金を寄付して、資金にし、
石を運んだり、貝を焼いて漆喰を作ったり、労働し、建てたもの。
今も、毎日、信徒さんが順番に、掃除をして、花を飾り、
電気代や燃料費を支払って、維持をしている。
彼らの祈りのための場所です。

だから、それを、県が、人を呼び込むための材料にしてないか、
旅行会社が、無責任なツアーを組みはしないか、
不安な気持ちになります。

一方、人の流れが、島の運命を左右し、
それが、教会や、島の人の暮らしを
守ることにもなるという面も、あります。

敬意を持って、旅をしてもらえるよう、
歴史を知ってもらい、文化を知ってもらい、島の現状を知ってもらい、
ここにしかないものを味わってもらいたい。

そういう思いで、記事を書きました。

思慮深い旅人、というのは、教えてもらった言葉ですが、
いい言葉だな、と思います。
そして、自分も、そう、ありたいな、と思います。

ここで起きていることは、
多かれ少なかれ、日本の地方で起きていること。

人口減が止められない地方では、産業を起こそうとしても、
簡単なことではなく、
それが、借り物だったり、頭でっかちだと、
定着しない上に、もともとあった、
残っている文化を損なうことすらあります。

いい結果が出るように、祈りたいです。

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